末っ子の最後の夏初戦!
もちろん選手も保護者も緊張の面持ちでこの日は目覚めたと思います。
今年はくじ運が悪く初戦の場所は「秦野スタジアム」
自宅から車で1時間以上の場所です。
保護者会長は朝から大忙しです。
この日の案内から応援の準備、差し入れの準備、来賓の方々の把握・・・
会場には2時間前には到着しましたがとにかくバタバタしたままプレイボールを迎えました。
初戦の相手はそこそこの強豪校です。
どちらが勝ってもおかしくない試合になることは予想していました。
それでも自分のチームの勝利を願わずにはいられませんね。
炎天下のもと、10時に試合は始まりました。
最後の夏はセカンドで出場です。
背番号は4
思えば1年生の時は外野手登録、2年生では背番号8なのにキャッチャー登録、そして3年時には内野手登録!
公立高校あるあるでしょうか?
逆にどこでも出来る器用な末っ子にはちょうど良かったのかもしれませんね。
試合序盤は両チームともとても落ち着いていてなかなかの好ゲームでした。
初回に1点を先制されるも3回にソロホームランで同点に追いつきます。
その次の回、この試合最大のチャンスがまわってきます。
ノーアウト満塁!
バッターが浅いライトフライを打ちました。
犠牲フライには少し浅すぎましたがここは基本的にランナーはタッチアップでしょう。
しかし!!
ランナーが躊躇してホームへ向かう途中に戻ります。
しかし相手チームの送球がそれてキャッチャーが後ろにボールをそらしました。
それを見て1塁ランナーと2塁ランナーは次の塁へ向かいます。
しかし
3塁ランナーはそのことに気がつかず帰塁してしまいます。
慌てて戻る1塁ランナーと2塁ランナー!
あわやトリプルプレーになるところでした。
続くバッター2人が三振&凡打に倒れ絶好のチャンスを潰してしまいました。
正直これは3塁コーチャーの完全なミスです。
でも弱小校ならではのプレーとも言えますね。
その次の回に1点をもぎ取り逆転に成功しました。
しかしその次のイニングで試合が完全に壊れます。
ここまで素晴らしいピッチングをしてきたエースと2番手を監督は躊躇なく交代し3番手のピッチャーに変えます。
実はこの継投はここ数か月の練習試合でなんども試していた戦い方でした。
しかし、この日のエースと2番手は本当に調子が良かったんです。
変える必要なんて全くないと誰もが思っていたのですが監督はいつものやり方を選択しました。
3番手のピッチャーはものすごく球が速いのが売りです。
しかし、コントロールにはずっと課題がありました。
案の定・・・
フォアボールの連続とおまけに死球・・・
1アウトも取ることなく逆転を許してしまいます。
あわてて4番手ピッチャーにスイッチしましたが相手に完全に傾いた流れはそう簡単に変わりません。
連打を浴びあっという間に5点を奪われました。
さらに満塁のピンチ!!
完全に我がチームの勢いは失われています。
応援席からもため息と悲鳴が聞こえ始めました。
ここで息子がタイムをかけピッチャーに歩み寄ります。
間を取ったりピッチャーの気持ちを楽にさせるためでしょう。
タイミングは絶妙でしたね。
ここで末っ子は「もうこうなったら仕方がない!悔いの残らないボールを投げてくれ!それでだめなら皆諦める!」と言ったようです。
プレー再開後息子の言葉虚しく長打を浴び8失点・・・
ここでコールド負けとなりました。
最後のランナーがホームインをしてコールドが決まった瞬間、全員がホームベース前に駆け足で整列をします。
しかし、息子はセカンドベース付近で完全に動けなくなっていました。
今起きている状況が理解できていないのか?悔しさでいっぱいだったのか?わかりませんが最後まで整列することが出来ませんでしたね。
ゲームセットが告げられ互いに礼をした後、選手たちの目には涙がありました。
これで終わった!あっけなかった!こんな負け方想像もしていなかった!
全員がそんな表情をしながら応援席の方へ挨拶に来ました。
母達はこの時点でみな号泣しています。
何とも言えない空気感が漂いました。
それでも私は一人冷静だったんです。
目の前の結果を受け止めると同時にこれまでの息子の野球人生をゆっくり振り返りました。
今日は結果が出なかったかもしれませんが、今まで懸命に結果をそれなりに出してきた息子の野球人生には妙な満足感があったんだと思います。
号泣する息子を見て「あいつの涙っていつ以来見ていないだろうか?」なんて冷静になるくらいでしたね。
この日息子は4打数2安打でした。
実は二日前、少年野球チーム時代にお世話になった監督からバッティングセンターで直前の指導をしてもらっていたんです。
大会の前の練習試合でバッティングの調子を崩していて本人も悩んでいたので最後の悪あがきでしたかね?
その成果が出たのか?
最後の大会できちんと2安打という結果を残しただけでも十分満足です。
保護者は座席と荷物を片付け球場の外で選手の帰りを待ちます。
保護者全員が何も発さず暗い空気が漂っていましたが仕方がないことです。
しばらく落ち着いたのち、私は恒例の「保護者会長挨拶」を始めました。
前々会長、前会長はそれぞれ最後の大会で挨拶を行っており私はそれをじっと見ていました。
両者とも挨拶の途中で感極まり言葉が詰まったり涙が出たりしている姿を見てきましたので、「私も泣かないとダメかな?」なんて内心思いながら話し始めました。
しかし!
やはりどこか冷静だったのでしょう。
全く感極まることもなく淡々と挨拶を終えてしまいました。
末っ子の最後の試合も保護者会長としての最後の仕事もあっけなく終わった感じです。
カミさんと自宅に戻り荷物を片付けたら一気に疲れが出たようで、二人でリビングで爆睡してしまいました。
数時間後末っ子は何食わぬ顔で帰ってきまして、なにも言葉を発することなく自分の部屋に閉じこもりいつもと同じように過ごしていました。
末っ子もまた冷静だったようです。
こうして末っ子の14年続けた野球の集大成は一瞬で終わりました。
これもまた人生!
今後末っ子がどのような道を選ぶのか?
逆に今は楽しみでなりません。