先日こんなニュースを見ました。
「自動車整備士の志願者激減!現場で人材の奪い合い・・・
工場の社長『引き抜きの電話ある』」
車検などを行う国家資格・自動車整備士の担い手不足が現在深刻化しています。
若者の車離れや職業の多様化などが要因で、整備士になるための国家資格試験の申請者は15年で5割近く減ったそうです。
自動車整備工場などの現場では人材の奪い合いも起きており、今後、車の安全確保にも影響を及ぼしかねないと懸念されています。
自動車関係の仕事をしているのでもう10年も前からこのことは自覚しています。
そもそも、自動車整備士は国家資格でありながらその待遇が長いこと改善されていません。
基本的に車の整備は国家資格を持った自動車整備士によって行われます。
我が国には車検というシステムがあるので国家整備士は必要です。
正直な話、整備士が整備を行わなくても陸運局の検査ラインで合格を貰えば車検は通せます。
きちんとした知識があり、器用に自分の車をメンテナンスできる方ならばそれでも構わないでしょう。
しかし、よく広告で見かかる「車検代行9800円」なんてものはただ通すだけでメンテナンスなど全くしてくれません。
そもそも、車検のシステムがいい加減で、車検時に重要保安部品や車検必須項目の部品に不備がなければ合格してしまうんです。
例えばバッテリーが弱るとエンジンがかからなくなります。
しかし、車検当日に検査ラインでその時だけエンジンがかかっていればOKなんです。
ブレーキパッドなども少なくなれば交換をしないと危険です。
でも検査ラインでその瞬間ブレーキが効きさえすればOKなんです。
つまり、その時だけOKならば次の車検時期まで乗っていいよ!というお墨付きが簡単に与えられてしまうんです。
このシステム自体に欠陥があることは多くの関係者が分かっています。
しかし、現在日本には7700万台もの車が存在します。
その全てを時間をかけて検査していたらとても追いつかないんです。
そのために私の運営しているようなお店が数多く存在します。
車検時だけでなく、日々安全に車を使うためのメンテナンスや修理を行っているんです。
その現場で日々活躍してくれているのが「自動車整備士」なんですよ!
自動車整備士は立派な国家資格です。
しかし、現状はいわゆる「3K」(キツイ・汚い・給料安い)と呼ばれる職業です。
暑い日も寒い日もピット内での仕事です。
最近は冷暖房完備のところもあるようですが、そのほとんどが屋外の作業です。
さらに、時間のかかる整備になると無条件で残業も発生します。
日々体力勝負なんです。
また、自動車整備は当然汚いものを常に触ります。
排気ガスや粉塵の中で常に働かなければいけません。
いつも汚れたツナギを着ているイメージですかね?
そして、一番の問題は給料の安さです。
大手カーディーラーに就職しても整備士の手取りは15~18万と聞きます。
サービス残業も多く休憩時間もあってないようなところもあるようです。
ではなぜ待遇がこんなにも悪いのか?
答えは一つ!
自動車整備に対する整備代金が安すぎるからなんです。
自動車の整備には手間と時間がかかります。
車検整備ならどんなに急いでやっても1台当たり2~4時間です。
故障個所の修理の場合、部品にもよりますが3~5時間かかることもあります。
整備以外にも書類作成や伝票処理、洗車やお客様への説明を考えると膨大な時間と手間がかかるんです。
しかし、その対価としていただける利益は1台当たり2~4万円程度・・・
丸一日作業してこれでは割に合わないのです。
ですから自然と台数を増やすしかなくなります。
薄利多売というやつです。
そのしわ寄せは全て整備士にくるというのが現状の姿です。
自動車整備士を目指す人の多くが車や乗り物が好きな方です。
大好きなものを毎日触って給料を貰える憧れの仕事のはずなのに、現実は残酷です。
上からの指示で交換しなくてもいい部品まで交換させられたり、逆に交換した方がいい部品を見て見ないふりをしなければいけなかったり・・・
異常がないのに「変な音がする!」なんて言いがかりを付けられたり・・・
きちんと整備しても、ドライバーの不注意で車を壊され整備士の責任にされたり・・・
さらに可哀そうなのが、閉鎖的な空間や場所で作業していることが多いですし、部品も多く複雑なのでほとんどのドライバーさんが何をしてもらったのかさえ分かりません。
だから「ありごとうございました!」とか「助かりました~感謝です!」なんて言葉を直接いただくことがほぼないのです。
自動車整備士に寡黙な人間が多いのは間違いなくこのせいです。
こんな環境ではモチベーションはどんどん下がってしまいます。
車が好きで始めたはずなのに、車を嫌いになってしまう人もいるくらいです。
自動車整備士が減ってしまうのは必然でしょう。
私のお店にも自動車整備士がおります。
凄く腕はいいのですがなかなか頑固な部分もあります。
入社当初はコミュニケーションが上手く取れず大変でした。
そこで、私はその整備士と対等に話をするために猛勉強をしました。
技術はありませんがせめて知識だけでもと思い必死に自動車の構造を覚えました。
おかげさまで今ではその整備士と色々なアイデアを出し合いながら仕事が出来ています。
しかし、その整備士にたくさんのお給料をあげられてはいません。
もっと待遇を良くしてあげたい!と本気で考えているのですが経営的な部分で難しいところがあります。
本人にも会社の現状を伝えているので理解はしてくれていると信じていますが、今よりももっといい条件で働かせてあげたいと本気で思っています。
これが自動車業界の現実なんです。
このニュースを見た時に「やっと取り上げてくれた!」という嬉しさもありました。
問題を大きく取り上げてくれなければ関心は集まりません。
現状も良くなりません。
このニュースがきっかけで少しでも良くなることを願います。