高齢者ドライバーについて

ここ数年高齢者ドライバーの問題があちこちで取り沙汰されています。

少子高齢化が進めばゆくゆくはこのような問題が出ることは頭の良い方なら誰もが想像できたはずなのに・・・

実際はあらゆる事故や事件が起こらないと問題にならないのが今の日本社会の縮図を表しているような気がします。

都合の悪い問題はなるべく後回しにする悪い癖、いい加減学習しましょうよ!って思います。

 

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私は自動車関係の仕事をしています。

高齢者ドライバーの問題は実は現場では20年ほど前から起きていました。

団塊の世代がまだ50代だった頃、よく息子さんや娘さんがご両親の車を持ってきては「親父もいい歳なんでいい加減車の運転をやめさせたいんだよな~」なんてセリフを現場でよく聞いていました。

しまいには車の整備をしようとしたら息子さんが突然現れて「これ以上車を乗せたくないから整備しないでくれ!消耗品を売らないでくれ!」なんて言われて困った経験もあります。

あれから20年・・・

そんなことを言っていた団塊の世代の方々は75歳以上の高齢者になりました。

比較的皆さん元気な方々ばかりですが、現場では今まさに「いつまで車を運転するか?」という話が頻繁に行われています。

当店をご利用いただいている最高齢のドライバーさんは89歳です。

20年来のお付き合いのある方なので「もういい加減運転をやめた方がいい!」とアドバイスをしているのですが一向に言うことを聞きません。

最近では杖をつかないと歩けなくなってきたので心配で仕方がないのですが、お客さんとしてご来店いただいた以上、依頼はきちんとお受けしなければならないのがサービス業です。

我々が出来るせめてものことは、しっかりと日々のメンテナンスをして差し上げることと、運転をくれぐれも気を付けるよう言い聞かせること、そして交通安全を願うことくらいです。

 

私の義理の父も77歳になりました。

数年前に事故を起こしたのでいよいよ免許返納を考えてくれ!と伝えました。

それでも体は本当に元気で山登りが趣味の人です。

じっくり話し合った結果、78歳の免許更新までは車を運転することを承諾しました。

自分の両親も70歳を超えました。

そろそろそんな話をしっかりしなければ!と日々考えています。

 

日本では高齢者ドライバーに対するきちんとした制限が無いことが問題になっています。

なぜなら、専用のルールを作りたくてもルールを作る側の人間もまた高齢者だからです。

自分たちはまだまだ年寄りではない!という意識がどこかにあるのでしょうか?

 

確かに年齢で全てを判断することは出来ません。

80歳でも元気な方々もたくさんいますし、50歳でヨボヨボの人だっています。

しかし、高齢者が事故を起こす確率や、多くのトラブルを起こす確率はどうしても高いわけです。

そろそろ本腰を入れて高齢者ドライバーの問題に着手しなければ間違いなく手遅れになります。

 

諸外国では高齢者ドライバーに対する法整備やルール作りが早くも行われています。

イギリスでは免許は70歳まで有効と決まっていて、その後は自己申告をしながら3年ごとに更新できる仕組みになっています。

中国では60歳を過ぎると毎年きちんとした身体検査を受けなければいけません。

免許は70歳で取り消されます。

お隣の韓国では免許を自主返納したドライバーには様々な優遇措置が受けられるようになっています。

 

逆のケースがアメリカです。

国土の広いアメリカはとにかく車無しの生活は不可能です。

日本では車を10万キロ乗るとすぐに買い替えよう!なんて話になりそうですがアメリカでは20万キロ、30万キロは当たり前です。

アメ車専門の中古車屋さんと取引がある為、本国から輸入された車をよく整備しますが、距離数を見るとたまにが80000マイルとか100000マイルなんて表示されています。(1マイルは約1.6kmです)

そんなアメリカで高齢者ドライバーから車を奪うことは不便な生活を強いることになりかねません。

ですので高齢者ドライバーになるべく車を長く安全に運転してもらうための制度やサポートが充実しています。

アメリカのとある財団が調べたデータによると、運転をやめてしまった高齢者は運転を続けている高齢者よりも、うつ病になる確率が2倍、介護施設に入る確率は5倍にもなるそうです。

国によって高齢者ドライバーに対する対応が違うことがわかります。

しかし、きちんとその国の風土や文化に合わせたルール作りがきちんと行われているという点では非常に評価できます。

 

もちろん日本でも高齢者ドライバーが免許を更新する時のハードルは上がりました。

ただ、簡単な身体検査とペーパーテスト、講習を受ければ比較的容易に免許を更新できてしまいます。

そこにはっきりとしたルールも基準もありません。

そこに誰もが疑問を持っているはずなのに一向に改善されないから、今まさに高齢者ドライバー問題が起きているのです。

ある意味高齢者ドライバーの方々もいい加減な法整備の犠牲者なのかもしれません。

 

ここからは私の持論を申し上げます。

まず、免許は70歳でいったん期限切れとしましょう。

その後免許を改めて教習所に通い取得し直しましょう。

もちろんその費用は半分くらいは国の負担でいいと思います。

その後は2年おきに更新をします。

最新の科学データに基づいた身体検査やテスト、事故や違反の有無も更新時には重要になるようにします。

そして、免許を更新するには少なくとも2~3名以上の方の推薦状が必要としましょう。

こうすることで万が一トラブルが起きても、対処、相談できる人間が近くにいるという証明にもなります。

一人暮らしで頼る人が誰もいない方が交通事故を起こして亡くなってしまったら、被害者はどうすることもできませんからね。

この繰り返しを行えば間違いなく高齢者ドライバーの事故は減ると思います。

また、2年おきに行う面倒な手続きを機に、免許を更新しない方も増えるでしょう。

 

もちろん高齢者ドライバーだけが悪いとは言いません。

若い奴で乱暴な運転をする奴は本気で怒鳴りたくもなります。

運転が苦手な女性ドライバーさんもたくさんいます。

全ての車が自動運転にでもならない限り、運転技術の差が日々道路で様々なトラブルを生んでしまうのは今になって始まった話ではありません。

ただ、高齢者の方々の運転を冷静に見ているとやはり事故を起こしても仕方がないと思うことが多いのは事実です。

そしてもっと問題なのが、事故後の対応がきちんとできないことです。

人命救助はもちろん、とっさの状況判断、しっかりとした説明と話し合いなどなど・・・

問題になっているのは事故そのものではなく、その後の対応力なのかもしれませんね?

 

今日もお店には80歳を超える方がいらっしゃいました。

年金だけじゃ生活できない!とまだ車を使ったお仕事をされているようです。

「どうか事故だけは起こさないでくださいね!今事故を起こすと色々と言われてしまいますよ!高齢者ドライバーには風当たりは強いですから~」と話しました。

理解してくれたかどうかはわかりませんが、一個人ができることは所詮このくらいです。

一日でも早く、みんなが納得するルール作り、法整備を強く願います。