親ガチャ

最近ネット上で「親ガチャ」なる言葉を目にしました。

街中でよく見かけるガチャガチャ!

お金を入れてダイアルを回すと商品が出てくるのですが、基本的にどの商品が出てくるかはわからないのが楽しみの一つでもあります。

お目当ての商品が出るまで何度もトライしてしまうギャンブル性もあります。

最近ではソーシャルゲームでアイテムやキャラクターを手に入れる手法をガチャとも言います。

子供が親を選べないことをこのガチャに例えた言葉が「親ガチャ」です。

 

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確かに子供は親を選べません。

親の都合で作られ、本人の意思なくこの世に生を受けます。

生まれてきた子供はその親に育てられるのが一般的です。

しかし、親に経済的な余裕がなかったり、学力が低かったり、精神的に未熟だったり不安定だったり、身体に障がいがあったり・・・

そのような家庭で生まれ育った子と裕福な家庭に生まれ育った子の格差は当然あるものです。

それを運命として受け入れるしかないのでしょうが、そう考えると「運」によると言えます。

自分の人生は自分で切り開くものだ!と主張しても空しく響くばかりです。

「親ガチャ」という言葉が出てくるのも頷けますね。

 

この言葉を見て「私はどうだったのか?」とふと考えてしまいました。

そして気が付きました。

自分は恵まれていたんだと・・・

 

裕福ではありませんでしたが大学まで通わせてもらいました。

習い事も塾も続けさせてもらいました。

酷かったアトピーも治してもらえました。

結婚したばかりで経済的に困っていた時には援助も受けました。

孫も可愛がってもらっています。

実に「運」が良かったんだと思います。

 

しかし、若いころは親や家庭環境を本気で恨みました。

友人の親や、その子の温かい家庭を見ては羨ましく思っていたものです。

なぜ我が家はこんなにも荒んでいるのだろうか?

なぜもっと経済的余裕がないのだろうか?

なぜいつも家の中が汚いのか?

その環境に満足していた時期なんてありません。

 

小学校の時に仲の良かった友人の家は本当に広く綺麗でした。

高級車があり綺麗な犬も飼っていました。

いつもお化粧をして綺麗な服を着ている優しいお母さんがいて、自宅に遊びに行くたびにおいしいおやつを出してくれました。

家具や家電も我が家のものよりも立派でした。

ちなみにその子の父親は銀行員だったと記憶しています。

 

高校、大学の時の友人はもっと凄かったです。

学費が高いことで有名な学校に入ったので、周りはお嬢様や御曹司ばかりでした。

いつも財布の中には皆1万円以上は入っていたと思います。

お小遣いをアルバイト代で賄っていた自分には一緒に遊び歩くのも一苦労でした。

大学生の時の友人はさらに強烈でした。

学校帰りにご飯を食べに行ったのですが、会員制の高級レストランに連れていかれました。

常連のようで支配人や調理長が若造にヘコヘコ頭を下げています。

結局2万円くらいのコースを食べました。

支払いはしていなかったのでおそらく親に後日請求がいっていたんでしょう。

またある時は学校帰りにカーディーラーに連れていかれました。

その友人は何と自分の目の前で車を購入したんです。

600万もする4WD車を即決で!

ここでも店長や担当セールスがヘコヘコ頭を下げていたのでよっぽどのお金持ちだったんでしょう。

ちなみにその友人のお父様は大手家電量販店の社長さんでした。

結局その友人と一緒にいるといつも育ちの違いに驚き、奢ってもらうのもマウントされているようで嫌だったので徐々に疎遠になりました。

今思えばもっと色々ごちそうしてもらえばよかったのかも・・・

 

こんな思春期を過ごしたもんですから自分の境遇を恨むのは当然です。

けっして貧しい家庭ではないことは理解していましたが、上級国民の生活と比較してしまえばそのような発想になるものです。

しかし、大人になり自分で生活基盤を築くと、つくづく恵まれた環境で育ったことが分かり始めます。

けっして裕福ではありませんでしたが、必要なものはきちんと買ってもらえましたし、ご飯もたくさん食べさせてもらえました。

あの時抱いていた不満や劣等感は今は全くありません。

 

しかしながら、世の中には本当に恵まれない子供たちも多くいます。

親に捨てられたり、犯罪者の子供になってしまったり、経済的な理由でやりたいことが制限されたり、虐待を受けたり・・・

そのような子供たちにとっては「親ガチャ」という言葉はすごくリアルなんでしょう。

私の周りにも少なからずそのような子供たちがいるのも事実です。

だからこのような言葉が流行ることに違和感は感じますが、同時に昔からあることなんだよ!と心の中で叫ぶだけです。

ただ、安易に使ってほしくない言葉であることは間違いありません。

 

末っ子が反抗期真っ盛りの時に言われたセリフは今でも鮮明に覚えています。

「てめ~の子供に生まれたことをすごく後悔してるんだ!生んでくれ!なんて頼んでいないのに勝手に生みやがって!このクソ親が!」

実は今から30年前、自分も親に全く同じセリフを言っていました。

さらにこのセリフを吐いた時の末っ子の顔が昔の自分にそっくりでして・・・

愛おしく感じましたし、逆になんだか変な遺伝の仕方をさせてしまい申し訳ない!とさえ思いました。

末っ子にとっても「親ガチャ」の瞬間だったんでしょう。

 

親としてできることはただ一つ!

「親ガチャ」なんて言葉を子供が使わないように一生懸命愛情を持ってきちんと育て上げること!ただそれだけです。

まだまだ子供が全員自立するまで7~10年ほどかかると思います。

だからこれからも親としての責任を一生懸命果たさなければ!と、この言葉を聞いて強く思いました。

最後に直接言えないので書きます。

「おやじ&おふくろ 生んでくれてありがとう!感謝しています」