もらい事故?

とても暑い日のことでした。

取引先にバイクで向かう途中に事件が起こりました。

今でも忘れられないもらい事故です。

 

車関係の仕事をしているので普段からお客様の車を多く運転します。

しかし、自分の車はほとんど運転しません。

我が家には自家用車が1台あります。

でもほとんどが妻がプライベートで使用しています。

私がハンドルを握るのは休みの日のお買い物くらいでしょうか・・・

そんな私には心強い相棒がいます。

ホンダ「リトルカブ」です。

 

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幼いころからホンダのスーパーカブに妙な憧れを抱いていました。

新聞配達員、郵便局員がギアを小刻みに変えながら乗る姿を見て幼心にかっこいいと思っていました。

なかでも一番かっこいいと思ったのは、お蕎麦屋さんが出前で使っていたスーパーカブです。

荷台にある「マルシン出前機」のあの存在感!

上下左右に水平を保ちながらスムーズに揺れる姿に心奪われたものです。

 

そして30歳の時、憧れのカブを手に入れました。

スパーカブは自宅の車庫には少し大きいので一回り小さい「リトルカブ」を購入しました。

カブは簡単には壊れない!というジンクス通り、今でも快調に動いてくれています。

そんなリトルカブは通勤はもちろん仕事でも大活躍です。

荷物の配達は出来ませんが、取引先への集金や営業、車を引き取りにい行くときには小さなリトルカブが重宝されています。

取引先にも駐車場や車を停めるスペースに限りがあったりしますし、バイクだと渋滞でもスムーズに移動できるので本当に便利です。

 

そんな大活躍の「リトルカブ」でいつものように取引先に向かう際、事件が起こりました。

私はいつもよく通る、歩道のある2車線の道を走っていました。

一時停止の交差点まで30メートルくらいだったので、徐々にスピードを落としながら走っていました。

真夏のお昼過ぎ!気温は35度くらいはあったでしょうか?

ふと歩道に目をやるとお婆さんがゆっくりと歩いています。

80歳くらいだったと思います。

この暑いなか大丈夫かな?と思ったその瞬間!!

お婆さんが突然前のめりに倒れこみました。

顔面から勢いよくコンクリートの歩道に倒れたのです。

ビックリした私は慌ててバイクを止め、お婆さんのもとへ!

その時バイクをしっかり止めればよかったのですが、気が動転していたのか?

エンジンを切らずにサイドスタンドも立てずに、バイクを横倒しにしたままお婆さんのもとへダッシュしました。

お婆さんは前歯を折り、額から血を流しています。

すぐに体を起こして声をかけたところ意識ははっきりありました。

救急車を呼ぼうと思ったのですが、お婆さんが全体重を私に預けていたので携帯電話がなかなか取り出せません。

そこへ自転車に乗った中年男性が通りがかりました。

中年男性も事態の深刻さに気が付き119番通報してくれました。

2~3分くらいすると通りすがりの方々が次々に足を止めてお婆さんの介抱を手伝ってくれました。

とある女性はハンカチを差し出して止血したり、ある男性は持っていた冷たいペットボトルのお茶を首元に当てていました。

私も必死にお婆さんを抱きかかえ、声をかけ続けました。

その時です!

「お前さん!お婆さんを歩道で跳ねるなんてどんな運転をしたんだ!」と中年男性に大きな声で言われました。

3メートル先には私のリトルカブがエンジンのかかった状態で横倒しになっています。

後ろのタイヤもクルクル回っている状態です。

そのバイクにあらためて目をやった時、自分の置かれている状態が理解できました。

 

血を流して倒れているお婆さん・・・

そのお婆さんを抱きかかえている自分・・・

たくさんの野次馬たち・・・

そしてエンジンがかかったまま倒れているバイク・・・

 

誰がどう見ても私がお婆さんを轢いてしまったシチュエーションです。

お婆さんを介抱しながら、中年男性に必死で状況を説明しましたがその男性の顔はどう見ても私への不信感でいっぱいのようでした。

他の野次馬の方からも「あの人が轢いちゃったみたいよ!」「お婆さん気の毒に!」なんて話している声が聞こえてきます。

しかも私、勤務中だったためお店の制服を着ていたのです。

事件があった現場はお店から500メートルほどしか離れていないご近所。

誰もがあのお店の人だよね!と認識できる状況です。

 

しばらくすると救急車とパトカーがやってきました。

救急隊員にお婆さんの介抱を代わってもらい事情を説明しました。

救急隊員は疑うことなく私の話を聞いてくれたのですが、同時に駆け付けた警察官はなぜか先程の中年男性と話しています。

私が第一発見者だ!と言わんばかりに身振り手振りで状況を伝え始めているではないですか。

そして最後に一言!「あのバイクが轢いたんだよ」と・・・

 

お婆さんは救急車に乗せられすぐにその場からいなくなりました。

そして始まった警察の事情聴取。

警察に一生懸命説明する姿は野次馬の方から見ると完全に犯人に映ります。

一生懸命説明すればするほど逆効果です。

しかし、バイクの位置とお婆さんの倒れ方、私の冷静な話しぶりが功を奏したのか?

次第に私は何も関係がないことが周りにも理解され始めました。

しかし「念のため調書を!暑いですし・・・」と言われパトカーに乗せられました。

さらなる説明の結果、私の無実は証明され20分ほどで開放はされましたが何とも言えない経験をしたものです。

その後お婆さんのことが気になって尋ねると、病院に行った後手当を受けて何も問題はなかったようです。

意識もはっきりとしていて自分が勝手に転んだだけだと自白してくれたとのこと。

この時点で私の無実が完全に証明されました。

 

ただ人助けをしただけなのにこんな思いをするなんて・・・

普段の行いが悪いんですかね?

それよりも事実を全く確認しないままその場を立ち去った野次馬の皆さん!

お店の制服を着た私を完全に黒だと思った皆さん!

適当な妄想だけで私を犯人扱いした中年男性!

全員に大きな声で言いたいです!

私は無実ですと!!

お店のイメージダウンにもなりかねない何とも言えない出来事でした。