経営者になって今年で5年目です。
まだまだ未熟ですし至らない点ばかりな事は自分が一番理解しています。
でも経営者として私には信念だけはきちんとあります。
それは
今の会社を必ずもっと大きくすること。
今よりももっとたくさんの人に必要とされること。
今よりももっと利益を上げること。
今よりももっと地域で信頼される会社であること。
今よりももっときちんと納税をすること。
それにより会社を利用する人たちが、そしてそこで働く従業員がみな幸せになること。
経営者であれば誰もが一度は強く思うことでしょう。
でもその強い思いに反比例するように上手くいかないことが多くなります。
売上が下がったり、悪評が広まったり、社会的存在価値を示せなかったり・・・
会社は生き物です。
必ずしも成長し続けること、売り上げを上げ続けること、存在をし続けることなんて出来ません。
だから経営者の手腕が問われるのです。
私は何もわからない状態で今の会社に入りました。
毎日が怖くて、面倒で、嫌で・・・
死ぬほどつらい思いをしながら働いてきました。
それでも続けてこられたのはカミさんと幼い子供達の存在があったからです。
社長になった今でも「よくここまでやってきたな~」と思う事のほうが多いです。
そんな私には揺るぎない願いがあります。
義理父から受け継いだ大切な会社を守り抜き、地域の方々に心から必要とされ、そこで働く従業員には心から幸せになって欲しい!という目標です。
抽象的で在り来たりではありますが、その思いの強さは他の経営者に負けないつもりでいます。
だからその目標の妨げになる人間は残念ながら排除するしかありません。
先日4年近く勤めてくれた従業員を解雇しました。
まさに苦渋の決断でした。
入社した時、彼は20歳でした。
口の利き方も、マナーも、仕事に対する姿勢も全くなっておらず、一言で言えば「バカ」でした。
それでも自分が20歳の時もこんな感じだったはず!という思いもあり雇うことにしました。
私は彼を雇った時にこんな目標を立てました。
「バカで世間知らずのこいつを一人前にして見せる!整備士の資格も取らせて数年後自分の右腕として働いてもらう!」
そう強く思ったんです。
それから私は目の色を変えて彼を教育しました。
厳しいことを言い続けましたが、体育会系の彼なら耐えられると思ったんです。
毎日厳しいい指導は続きました。
同時に彼にはたくさんの楽しい時間も提供してあげたつもりです。
お金がないのであげたこともありましたし、おいしいものを食べにも連れて行きました。
世間知らずだからこそ、色々なお店や場所に連れて行き経験を積ませました。
もちろん強制したわけではありません。
彼はいつも喜んでついてきました。
結婚をした時は盛大にお祝いをしましたし、子供が生まれた時は自分のほうが嬉しすぎてどうにかなりそうになったくらいです。
自分の子供の様にかわいがりました。
そんな彼が入社してから半年経ったころです。
「もっと自分は色々勉強したいです!」と言うので読書を勧めました。
自分も本はよく読む方でしたので、自分が読んで面白いと思うものを手あたり次第読ませました。
同時に整備士になるための勉強もさせました。
家ではもちろん自発的に勉強など出来ません。
勤務中もなかなか難しいです。
そこで彼は私が出勤する朝7時30分に会社に来るようになりました。
始業は9時30分からです。
私はもう10年以上前から「朝活」をしています。
誰よりも早く出社し、仕事を始めます。
営業時間中に出来ない仕事は朝のうちに全て片付けていたんです。
その時間に彼は会社に来て毎日読書を始めました。
そのうち、本を読むスピードも理解するスピードも上がり、2年間で100冊程度は読んだと思います。
その朝の貴重な時間を利用して私は色々な事を伝えました。
一番伝えたのは仕事への心構えでしょう。
このブログで書いているような自己啓発的な事から、社会人としての最低限のマナー、仕事の仕方、そして何よりも物事の考え方をありったけ伝えました。
その全てを20歳そこそこの人間がすぐに理解できるなんて思っていませんでしたので、ことあるごとに紙に書いて渡したり、何度も同じセリフを言い続けて吸収させました。
すると、多少の効果があったようで仕事も板についてきました。
言われなくても率先して仕事をするようになりましたし、私ならここまでやるであろうことを予想して、私がやるクオリティーになるよう仕事をこなしてくれるまで成長しました。
それでもバカなので時々とんでもないことをしでかします。
そんな時は心の底から怒りました。
そこには憎悪の感情などなく、自分で言うのもなんですが愛情が確かにあったと思っています。
バカはバカなりに努力している姿を日々間近で見守っていたんです。
そんな時私は彼にこんなことを言いました。
「3年間で一人前になるには相当な努力が必要だ!俺は3年目で個人で月間300万円を売り上げた!お前に出来るか」と・・・
彼はこう言いました。
「少し時間をください。必ず300万売れる人間になるんで・・・」
自信満々にこたえる姿に思わず期待をしました。
しかし、そんな彼が急に変わりました。
子供が生まれて数か月がたった頃でしょうか?
毎日仕事中に送られてくる奥さんからの子供の写真や動画!
それに夢中で仕事に集中できなくなっているようにも感じました。
仕事が残っていても家に帰ることを優先する毎日。
おかげで彼のやり残した仕事は全て私が夜な夜な残ってやるしかありませんでした。
自分も子供が生まれた時には同じような感情があったものです。
1分1秒でも子供のそばにいたい。
その可愛さに癒されていたい。
その喜びに酔いしれていたい。
私だって心からそう思っていた時期は確かにありました。
しかし、仕事は仕事です。
いい加減に、中途半端にやるような人間にはなりたくなかったので、仕事はきちんとやりました。
そんな時、以前も書きましたがある方から言われたセリフが役に立ちました。
「子供のそばにいつもいてあげることなんて誰でも出来る。本当にいい父親は女房や子供が困っている時に、経済的にも精神的にも支えてあげられる人間の事を言う。今のお前にそれが出来るか?」
さらに
「毎晩家に帰った時に、女房、子供の目を見て『俺は今日お前たちの為に仕事を頑張ったぞ!』と胸を張って帰れるのか?それが出来ないということは、仕事をきちんとしていない証拠だ!」と・・・
この言葉は今でも強く印象に残っていますし、私の仕事に対する姿勢へのきっかけになったセリフです。
当然私は彼にこのことを伝えました。
最初は「よくわからない」と言った表情をしていましたがその数日後、彼は私に「この前の話がめちゃくちゃ印象に残っいて・・・俺家族の為に頑張ります!」と言ってくれたんです。
私は自分の考えを押し付けるつもりはないことを日々伝えていますが、自分と同じ思いを彼が抱いてくれたことが妙に嬉しく思えたんです。
ところが、彼の仕事に対する姿勢は日々後ろ向きになるばかりでした。
毎日楽なほう、楽なほうへ逃げていく。
面倒なことは人に押し付ける。
あれだけ頑張っていた勉強も全くしなくなる。
お客様がいてもなるべく関わらないようにする。
挙句の果てには他の従業員の悪口を陰でこそこそ言い出します。
もちろん私は何度も怒鳴りつけました。
奥さんの前で説教をしたこともあります。
このままではいけない!と何度も言い続けました。
残念ながら彼の態度は変わりませんでした。
同時に私は強い失望感に襲われました。
毎日会社で彼の姿を見るたびに、脱力感と虚しさで心がどうにかなりそうでした。
これまで彼を育てるために、自分の貴重な時間と財産を使えるだけ使いました。
別に見返りを求めていたわけではありません。
ただ、少しでも彼の役に立ちたい!という気持ちだけでした。
どうやら私は投資に失敗したようです。
ここ数か月、彼に対する思いはどんどん消えていき、何か言う気力も、指導するベーションももはや残ってはいませんでした。
彼はますます腐っていきます。
他の従業員に指導を頼みましたが、全く聞く耳を持ちません。
ちなみに先月の彼の売り上げは16000円しかありませんでした。
私を含め、他の従業員が仕事をしていても知らんぷりです。
勤務態度もどんんどん悪くなり、会社での存在意義はもはやなくなりました。
そんな彼をすぐに解雇することは容易にできました。
でも心のどこかで、「また前のように頑張ってくれるのではないか?」「今は環境が変わって一時的におかしくなっているだけなんだ!」「きっとすぐに気が付いてくれる!」と信じていたかったんです。
私は3か月だけ待つことにしました。
でも事態はなにも変わりませんでした。
7月は夏季賞与の時期です。
彼には夏季賞与を払って解雇しました。
生活があるわけですから、私が最後に出来る精いっぱいの気持ちでした。
解雇通知をみて何を思っているのか?はわかりません。
おそらくものすごく怒っているかもしれません。
そして心の底から私を憎んでいるかもしれません。
でも仕方がないことです。
彼にはうちの会社で成果を上げられる実力や能力がなかったんです。
お給料を貰って働いている以上「プロ」です。
プロスポーツ選手も能力が低いと判断されれば戦力外通告を受けます。
今回はまさに戦力外通告でした。
今は本当に心苦しいです。
自分の未熟さ、指導力の無さに腹が立ちます。
同時に彼の言葉を鵜呑みにして過度な期待をした自分にも腹が立ちます。
経営者をしていて最もつらい瞬間でしょう。
それでも私には揺るぎない信念と目標があります。
それを実現させるために障害となりうるものは徹底的に排除しなければいけません。
自分の「信念」と彼に対する「情」がぶつかり合ったこの数か月ではありましたが、私は前を向き続けるしかないんです。
経営者としてもっと強く、もっとたくましくならなければこの先会社を存続させていくことなんて出来ないでしょう。
いまはこうしてブログに綴ることでしか心を落ち着かせることは出来ませんが、彼のこれからの幸せな人生を心から願っていますし、彼がさらに活躍できる職場を見つけて欲しいものです。
今日はきっと寝られません。