なんでもコツコツやったもん勝ち!

「継続は力なり」

若いころから目上の人に耳にタコができるほど言われた言葉です。

毎日コツコツと続けていれば必ずいい結果が待っている!

何事も諦めずに続けることが大切だ!

そう教わってきました。

 

しかし!

20代~30代前半はなかなか結果が出ずに「結局才能や運に恵まれた人が成功する世の中だ!」と卑屈になるばかりでした。

仕事もなんとなくやっていましたし、自分を成長させようなんてこれっぽっちも思えませんでしたね。

そんな時、ある人との出会いで私の人生は大きく変わりました。

 

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今から9年前の2013年の6月の事です。

当時私は仕事に行き詰まっていて毎日イライラしていたような気がします。

義理父の会社でそれなりに仕事は頑張っていましたが、なかなか思うように売り上げが伸びず、それを義理父のマネジメントや同僚の仕事に対する意欲の無さのせいにしていたと思います。

このままではダメだ!自分がこの店をもっといい店にするんだ!と張り切れば張り切るほど空回りする毎日でした。

徐々に同僚との衝突、義理父との確執が生まれ始めます。

そんな時にお店の面倒を見てくれていたエリアマネージャーのKさんに「飲みに行こう!」と誘われます。

ジレンマに陥っている私を見て可愛そうになったのでしょう。

 

数日後の飲みの席で私は今抱えている悩みや不満をKさんにぶつけました。

Kさんは私の目をじ~っと見て無言で話を聞いてくれていたことが妙に印象に残っています。

一件目の飲み屋のあと、キャバクラにも連れていかれました。

私が最も苦手とする場所です。

席に着くと私の先程までの勢いはすっかりなくなります。

露出の高い服を着た女性を隣にして全くしゃべれなくなったんです。

その時Kさんがこんな事を言いました!

「この若い子社長さんだよ!凄く優秀で会社の業績も絶好調なんだよ!」と・・・

私は一瞬フリーズしました。

だって社長でもないですし、お店の業績が悪いから先程まで愚痴っていたわけですから。

すると若い女性が私に近づき「じゃ~今夜はたくさんお酒を頼んでくださいね!」と言いました。

当時安月給だった私はすかさず「そんなにお金ないですよ!」と言ったのですが、次の瞬間!!

Kさんがそれなりに高いボトルを注文したんです。

女性たちはさらに愛想がよくなりその場は大盛り上がりでした。

私は自分の財布に1万円くらいしか入っていないことをず~っと気にして全く楽しめません。

結局2時間ほど滞在してお会計の時を迎えました。

ボーイさんが持ってきた紙には「85,000円」と書かれてあります。

正直「カミさんに殺される・・・」としか考えられませんでしたね。

私がおろおろしているとKさんが「じゃ~これで」とカードを出しました。

私もすかさず財布を出す素振りを見せましたがもちろん払える額ではありません。

結局その日は全部ごちそうになってしまいました。

 

その帰りのタクシーでの一言が私の人生を大きく変えます。

Kさんはタクシーの中でこう言いました。

「来週も連れて行きたいところがあるから丸一日予定を空けておいてください。今日ごちそうしたのはそのためですから・・・」

 

翌週私は行き先もよくわからないままKさんの車に乗り込みました。

スーツだけ着てきてください!と言われたので普段はあまり着ない安いスーツで同行したんです。

車を走らせること2時間!

到着したのは同じ業界で大成功を収めているお店の駐車場でした。

そのお店の事は色々な方から聞いてはいました。

T社長のマネジメントが素晴らしい!という評判も含めてです。

 

お店に着くと社長さんが自ら出迎えてくれました。

「ようこそ!今日はゆっくり話をしましょう!」

T社長のその時の顔は非常に優しく、イメージしていた方とは大きく違いましたね。

お店の中を案内された後、会社の応接室に通されました。

あらためて名刺を交換し席に着きました。

するとT社長がこう言いました。

「なにか悩みがあるみたいだね?それをぜひ聞かせてください」と。

私はここぞとばかりにベラベラと話しました。

先日の飲みの席でKさんに愚痴った内容と同じようなことをです。

T社長もKさんと同じでじ~っと私の話を聞いてくれました。

T社長は1時間ほど私の話を聞いた後、「お昼ですしそろそろ飯でも食べましょうか?」と言って応接室から出ていきました。

昼食はこれまたすごく高級なお店に連れて行かれました。

完全予約制のような高級和食料理屋さんです。

そこでも食事をしながらT社長は私の話を黙って聞いてくれました。

ものすごく話をしっかり聞いてくれるので、私はさらに愚痴っぽくなったのを覚えています。

食事が終わるとまた会社の応接室に通されました。

席に着くと今度はT社長が突然大きな声で話し始めました。

「あのさ~さっきから話を聞いてたけど全く救いようがない人だよね!人のせいにばかりして自分が頑張っているアピール!そんなことわざわざ遠いところに来て口にしても何も解決しないんじゃない?いい加減自分の未熟さに気がつきなよ!」

私はただただ黙るしかありませんでした。

返す言葉もないほど的を得ていたからです。

自分の薄っぺらさを見抜かれたようで非常に恥ずかしくもなりました。

それでも私はこう言いました。

「そのご指摘も含めて私は何とかしたいんです。新しい何かにチャレンジしたいんです!どうかアドバイスをください!」

するとT社長はこう言いました。

「新しい何か?笑わせないでよ~ その新しい何かを誰もがみんな考えてるんだよ!君だけじゃない!それに今できることをきちんと出来ていない人間が新しい事なんて始められるわけないじゃん!なんか勘違いしていない?」

この言葉に私は完全にノックアウトされたわけです。

悔しくて返す言葉もなくて、そして何より恥ずかしくて体がブルブル震えました。

初対面の人にさんざん愚痴を話したうえに説教される・・・

こんな経験は人生で初めてだったかもしれません。

 

しばらく沈黙が続きました。

T社長もKさんも何も話してくれません。

私はこの場から今すぐにでも逃げ出したくなりました。

そんな重い空気のなか、T社長が静かに口を開きます。

「君のところお店のHP持っているよね?あまり更新されていないけど君が一人で書いているの」

T社長は事前に私のお店の事をきちんとリサーチしてくれていたようでした。

 

今から13年ほど前に会社のHPを立ち上げました。

もともとは本部が主導で始めたものですが、私も「これからはネットの時代だ!」とそれに参加したんです。

もちろん最初は張り切って書いていましたが、だんだんと面倒になり、気が向いた時だけなんとなく更新している状態でした。

そのHPを見たT社長はこう言ってくれました。

「内容も文章もなかなかいいじゃない!うちのスタッフにも真似させたいね!君にはこういったものを作るセンスがあるんじゃないの」

ちなみにT社長のお店のHPはほぼ毎日更新されていて、その当時アクセス数は全国でトップでした。

もちろん私もそのHPはよく見ていましたし、すごいな~とは思っていたんです。

そして「せっかく伸びしろのあるコンテンツを持っているじゃないか!それを一生懸命やらずに、何か新しい事を挑戦するなんて間違っているよ!まずは今自分の目の前にある『できること』にしっかり目を向けてがむしゃらにやってみなさい!それでも上手くいかなかったらもう一度私を訪ねなさい。その時にまた一緒に考えてみましょう」

T社長からこの言葉を最後にいただき応接室を出ました。

 

帰りの車の中では、Kさんも私もほとんど会話をすることはなかったです。

私はこの時すでになんとなくですが、「やるべきこと」「向かうべき方向性」を理解したんだと思います。

Kさんは一言だけ「私が今日あなたを連れてきた目的が分かりましたか?明日からの活動に期待しています」と言って私を送り届けてくれました。

 

翌日から私は心を入れ替え、今まであまり手を付けていなかった会社のHPを更新しました。

この時決めた目標は「1年間毎日連続で更新すること!」

ただひたすらに毎日更新することだけに集中したんです。

翌月からは他のスタッフも全員巻き込みHPの更新を順番に行うようにもなりました。

HPの内容自体はお粗末なものではありますが、毎日更新し続けることで何かが変わるような気がしていたんです。

 

時は流れあれから9年!

私の会社のHPは3000日以上連続更新を続けています。

2017年にはT社長のお店のアクセス数を大きく超えることもできました。

全国で同じようなHPを各店が運営していますが、アクセス数は5年間トップを維持しています。

当然HPのアクセス数と比例するようにお店の売り上げも順調に伸びていきました。

スタッフもそのことを実感しているのか?日々サボることなく更新を続けてくれています。

今ではHPを見た方からの問い合わせや、遠方からのご来店も日常的にあります。

まさにHPが私のお店の生命線となったわけです。

 

そしてあらためて気が付きました。

「継続は力なり!」「何かをコツコツと続けたもん勝ち!」ということに・・・

 

若い頃はその意味が全く分かりませんでした。

なぜならば、結果が出るまでにはそれなりの時間を要するからです。

お店のHPもアクセスが上がり始めるまでに4~5年かかりました。

結果はずいぶんと後になってからある日突然現れるんですよね。

いつ結果が出るかわからないことを続けるには根気が要ります。

途中で何度も挫折しそうにもなりました。

それでもこうして結果が出た今、あらためて強く思うものです。

 

習い事も勉強も趣味もそして仕事も・・・

なんでもコツコツと続けた人間だけにそれなりの結果が現われるものです。

もちろん秀才や天才と呼ばれる方はすぐに結果が出せるのかもしれませんが、私のような凡人にはこの方法しかない!ということでしょう。

 

9年前のあの日、Kさんに連れられてT社長のところに行っていなかったら、お店そのものが潰れていたかもしれません。今こうして元気に毎日営業出来ていることもなかったでしょう。

お店の売り上げも業績も好調とはいえまだまだ言えません。

これからも自分にできる精一杯を続けるしかないことも分かっています。

出来ることをきちんとやる!当たり前の事を当たり前にやる!

凡人が出来る唯一の事をただひたすらにコツコツと続けるだけです。

 

あの日以来、T社長には毎年必ずお礼のご挨拶をさせていただいております。

そのたびに笑顔で「がんばっているね!本当によくやっていると思う!これからもずっと応援しています!」と言ってくれます。

自分の恵まれた環境に感謝しつつ凡人は今日も仕事に励みます。

 

ちなみに昨年Kさんにお会いしました。

今は出世されて遠いエリアで活躍されています。

「あの日の飲み代いつ出世払いしてくれるの?一生待っているからね!」なんて冗談を言われました。

コロナが落ち着いたら今度は私が銀座の高級クラブにでも連れて行きますね。