「野球始めたの?上手になりたければ早朝野球に来いよ!」
今年の4月、私が代表を務めている少年野球チームの監督に突如言われたのが全ての始まりでした。
昔から大好きなスポーツ!それが野球です。
しかし、少年野球チームに所属したり中学高校でも野球部に入るなんて勇気は全くなく大好きな野球は観戦することが私の楽しみ方でした。
新型コロナウィルスの感染拡大で唯一の楽しみであったハマスタ観戦が出来なくなり、じゃ~自分でプレーしてみようかな?と安易な発想で始めたことは以前も書いたと思います。
実際にグラウンドでプレーしてみると私の想像以上に難しいスポーツであることが分かりました。
一番驚いたのはグラウンドの広さです。
特にホームベースから一塁ベースまでの距離!
こんなにも遠いのか?とビックリしました。
ボテボテのゴロなんて一塁まで全速力で走ればセーフになるだろ~と思っていましたがとんでもない話でしたね。
また、サードからファーストまでの距離にも驚きました。
素人の私がノーバウンドで投げるにはあまりにも距離がありましたね。
外野を守っていてもどこにボールが落ちてくるのか?なんて始めた当初は全く分かりませんでした。
末っ子は現在高校球児です。
幼いころから野球を習わせ、そのプレーを腕を組みながらいつも無表情で見ていました。
未経験者ですので特別なアドバイスなんてできませんが、エラーをしたり三振をした時などは「なにやってんだ~」とヤジっていたものです。
そんな息子が一生懸命やっている野球というものを40を過ぎて本格的に始めた自分。
いつもどこか否定的に見ていた末っ子に対して尊敬の念すら覚え始めたんですね。
そして心のどこかに「俺も負けてられん!息子には敵わないかもしれないがオヤジだってそこそこやれるんだぜ!」という気持ちが芽生えました。
それからというもの毎日のように素振りをしたりタオルを使ってシャドーピッチングをしたり、とにかくストイックに野球と向き合い始めたんです。
苦手だったバッティングもバッティングセンターへ毎日のように通い、一日200球の特打ちを自分に課しました。
でも、実際に緊張感のある試合はやったことがほとんどない為、どうしても上手くならないんです。
そんな時に誘われたのが早朝野球でした。
デビューは4月の終わり頃でした。
「とりあえずグラウンドに5時集合ね!」と言われグラウンドへ向かいました。
寝坊してはいけないのでアラームを5分おきに設定したものです。
グラウンドに到着するとチームの代表の方からいきなりユニフォームを渡されました。
しかもそのユニフォームの背番号は「1」!
野球ではエースが身につける背番号です。
そして、この時生まれて初めて野球のユニフォームに袖を通しました。
スパイク、ソックス、アンダーシャツとベルトは事前に用意していたのですが、ユニフォームを着るのはこの日が初めてです。
正直どうやって着るのが正解なのか?もわからずにとりあえず着ました。
簡単な挨拶をするとすぐにボールを渡されキャッチボールが始まりました。
しばらくするとチームのメンバーさん達が続々と集まってきます。
「今日からお世話になります!よろしくお願いします!」と脱帽し挨拶をします。
ほとんどの人から「お~よろしく」とそっけない返事が返ってきました。
あとで気づいたんですが、みんな早朝の為テンションが低いんですよね。
夜勤明けでそのまま来る方もいたりするので・・・
すぐにスタメンが発表されました。
初めての出場は9番セカンドでした。
あまりの緊張であの日のことはほとんど覚えていません。
ただ初打席で内野安打を打ったことだけ覚えています。
とにかく疲れましたね。
翌週からは本格的にメンバーとして毎試合フル出場でした。
3試合目の時にある方に声をかけられました。
50代後半の強面の方です。
「あのよ~もっと一つ一つのプレーをハッキリやれよ!初心者だか何だか知らんけど遠慮なく思いっきりやれ!さーもっとしっかりボールを放っみろ!」
そのセリフをかなり強い口調で言われたのですごくビビってしまいました。
しかもその日、その方の目の前で何でもないフライを落球・・・
落ち込んでいたらまたしてもその方に「くよくよしてんじゃね~よ!バットで取り返してこい!」と言われ余計に肩が小さくなります。
言われた直後の打席で見逃し三振!
「おいおい!そんなんじゃいつまでたっても上手くならね~ぞ!」と追い打ちをかけられてしまいました。
しかし、人間は本当に成長するものです。
日々の基礎トレーニングと練習のおかげで6試合目あたりからはなんとなくですが経験者の方々に迷惑をかけずにプレーできるまでになるんです。
ヒットも毎試合打てるようになりましたし、ボールもきちんと捕球できるまでになります。
でも強面の方からは相変わらず「まだまだだな~お前のプレーには覇気がない!」とダメ出しをされ続けていました。
10試合くらいするとチームメイトの方々に自然と声をかけていただけるようにもなりました。
本当にありがたい話です。
気が付いたら、足が速いというだけで守備位置はセンターに固定されていました。
試合中、外野に大きなフライが上がるとチームメイトから「センタ~~~」と大きな声が飛びます。
何度もエラーをしたのでそのたびに「センターに飛んだらもうヒット確定だな!」と皮肉交じりでイジられたこともありました。
しかし、何度も経験するうちにだんだん取れるようになってくるんです。
最後の3試合はエラーをすることはなくなりました。
そして迎えた今季最終戦。
本来であれば一年中試合ができるグラウンドなのですが、早朝野球は6時プレーボールです。
この時期になると6時でもまだ日が昇っていません。
5時に球場入りしても真っ暗なんですね。
6時にやっとボールが見えてくるほどです。
なので10月の中旬にはシーズンが終わってしまうのです。
この日は最終戦という事でチームをシャッフルしての交流試合になりました。
いつも戦っているチームの方と一緒にプレーするのはなんだか新鮮です。
その強面の人も同じチームでした。
9番レフトで出場です。
最終戦という事もありみんなフルスイングしてきます。
外野に結構な勢いでボールがどんどん飛んできます。
私はそれをドキドキしながらも大事に捕球していました。
すると4回の裏、左中間に大きな打球が飛んできたんです。
センターの方と私が懸命に追いかけます。
私のほうがいち早くボールへ近づきました。
凄い勢いでボールがこちらに向かってきます。
私はさらにスピードを上げボールへダッシュしました。
そしてナイスキャッチ!
自分でもびっくりするくらい気持ちよく取れました。
チームの方からは「ナイスレフト!」と声をかけていただきましたよ。
試合はそのまま無事に終わりグラウンド整備後にチームの方々に挨拶をしました。
帰ろうとしたその時!強面の方から声をかけられました。
「おい!俺が言うのもなんだけど本当に上手になったな~おまえさん。この短期間でよくここまで・・・本当に凄いよ!努力したんだな!来シーズンもよろしくな!」
その言葉を聞いた瞬間、若干目頭が熱くなりました。
素人の私をいつも気にかけていただき、厳しい言葉をかけてくれたことに感謝しかありませんね。
顔は怖いですが本当に心優しい方です。
深く頭を下げて清々しいい気持ちでそのまま出勤しました。
こうして40過ぎのオッサンの無謀なチャレンジはひとまず終了したわけです。
なんでもチャレンジして本気で取り組むことの大切さを早朝野球は教えてくれました。
5か月ほどシーズンオフに入りますが、その間は自分のチームでしっかりと練習に励もうと思います。
来シーズンも頑張ります!