深夜のアルバイト(スーパー銭湯編)

おめでた婚でしたので結婚して半年後に長男が生まれました。

その1年4か月後には長女が生まれました。

その影響で超絶ブラックだった仕事から今の仕事に変わりました。

おかげで夜7時には退社し家で翌朝9時まで家族とゆっくり過ごす時間が持てました。

子供と一緒に過ごせる時間は確かに幸せな時間でしたが、なんだかその時間に徐々に違和感を感じ始めたんです。

もともとショートスリーパーですので、子供とカミさんが寝た後もなんだかんだで起きている毎日。

連日深夜の3時~4時までは起きてテレビを見たり本を読んだりしていましたかね?

そんな生活にどこか罪悪感を感じていました。

一日14~18時間休みなく働いていた生活から急に家にいる生活になったので当然でしょう。

そこで私は深夜のアルバイトを探しました。

給料も安かったですし、少しでも家計の足しになれば!と考えたからです。

 

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ある日、新聞の折り込み広告の求人紙に気になるアルバイトを見つけました。

近所に最近オープンしたスーパー銭湯の求人です。

当時、世の中は空前のスーパー銭湯ブームでした。

従来の街の銭湯とは全く違い、たくさんの湯舟やサウナ、食事が楽しめる大きなものがいたるところに出店していましたね。

 

早速電話をし面接に行きました。

時間は夜の10時から深夜の2時までの4時間。

時給は1280円です。

面接に行くと若い社員さんが対応してくれました。

子供がいること、昼間は働いていること、少しでも生活費の足しにしたいこと、全てを包み隠さず話しました。

数日後、見事採用が決まりました。

 

採用が決まった時、カミさんは怪訝そうな顔をしていました。

「また家にいない生活するの?家族との時間がそんなにいや?」とも言われました。

しかし、「少しでもおいしいものを食べられたり、家族で出かけることができた方がいいでしょう?俺だって家族にもっといい暮らしをさせたいから!」と反論はしました。

結局週に3日だけ!という約束でアルバイトが始まります。

 

私の仕事は「脱衣所と浴室、館内の清掃」でした。

このスーパー銭湯には3つの部署がありました。

「フロント受付業務」「食事処の調理」「清掃」です。

料理好きの私は食事処でのキッチン業務を希望しましたが、空きがないとのことで清掃のほうにまわされたんです。

 

最初の出勤日、制服に着替え簡単な朝礼を行った後、リネン室というところに案内されました。

私の指導はベテランの55歳のおばちゃんが担当することに。

簡単な挨拶をすませいざ業務開始です。

まずは業務用の大きなクイックルワイパーを使って脱衣所を掃除します。

脱衣所に入ると大勢の全裸の男の人が私の目に飛び込んできます。

お客として利用している時には何も感じませんでしたが、あらためてその光景を見ると少し驚くものです。

床には髪の毛や陰毛、ゴミがたくさん落ちているんです。

クイックルワイパーにはどんどんゴミが溜まります。

そして何度もシートを替えては掃除を繰り返すんです。

その後はタオルや浴衣の回収です。

脱衣場にある使用済みタオルや岩盤浴で使用された浴衣を回収するのですが、汗や拭きとった水分でどれもビショビショです。

なんだか気持ち悪かったのですが、すぐに慣れました。

脱衣所にある牛乳瓶の回収やドライヤーのメンテナンス、鏡の清掃もついでに行います。

その後は浴室へ行きシャンプーやリンスの詰め替え、カミソリや使用済み歯ブラシの回収、浴室周辺の滑りやすい場所を清掃します。

ある程度綺麗にしたら今度は館内全体を掃除です。

下駄箱、食事処、喫煙所、マッサージチェア周辺を綺麗にします。

そんなルーティーンをひたすら繰り返すのが私の仕事でした。

 

そんな清掃業務の中で一番過酷だった作業はサウナのマット交換です。

男性サウナには32枚のマットが敷かれています。

それを全て一人で交換するんです。

フロントさんにサウナマット交換のアナウンスをお願いしサウナへ向かいます。

扉を開け、お客様に退出するよう大声でお願いをします。

気持ちよくサウナに入っているお客さんからしたら「なんだよ~」と思うでしょう。

毎回ブツブツ文句を言われたものです。

サウナ交換は原則5分以内に行わなければいけません。

70度~90度あるサウナ内で一人黙々と急いで交換をします。

サウナは5段になっているので上がったり下りたり・・・

1~2分もすると当然汗だくになります。

交換が終わる頃には全身汗でビショビショです。

かなりキツイ作業でした。

 

サウナのマット交換よりもきつい仕事がもう一つありました。

入れ墨やタトゥーの入ったお客様を退場させる業務です。

今でも多くの温浴施設が入れ墨やタトゥーのある方の入場を断っていますね。

このスーパー銭湯も同じでしたが、特にうるさかった印象です。

脱衣所やお風呂で裸にならないとなかなか見つけられないので、それを注意するのは脱衣所や浴室に出入りしている私の仕事でした。

入口や脱衣所に「入場お断り」の看板があるにもかかわらず真顔入ってくる人が一定数います。

その方々に丁寧に説明をし退場を促すのですが、大体文句を言われるものです。

なかには大声で威嚇する人や、ブツブツ文句を言ってなかなかでない人、胸ぐらをつかんでくる人さえいました。

しかし、男って単純です。

全裸になると急に弱気になるのか?私が陰部やタトゥーをじ~っと見ると大体の方は素直に応じてくれました。

やはり裸って無防備なんでしょうね。

そんな方はお風呂から出てから文句を言い始めたりもします。

その場合は社員さんが対応してくれるので安心でした。

 

そんな深夜のアルバイトを気がついたら7年も続けてしまいました。

その理由は一緒に働いていた社員さんやパートさん達とものすごく仲良くなったからです。

深夜のパートさんたちの多くは家庭を持つ主婦の方々でした。

子供が小さく昼間はなかなか働きに出られない方が、旦那さんが家にいる深夜に働いていたんです。

その方々からは子育てについてのアドバイスをたくさんいただきました。

皆さん2~3人のお子さんがいる方ばかりでしたのでとても頼りになりました。

幼稚園のこと、小学校のこと、中学高校のこと、部活動のこと、習い事のこと、これからかかるであろう学費のことなどなど・・・

リアルな声をたくさん聴けたので今思えば本当に参考になっていたと思います。

また、同世代の若い人たちとも仲良くなりました。

バイトが終わってから朝までファミレスで楽しい時間を過ごしたこともありましたね。

数か月に一度、お店のメンテナンス日がありまして、その時には社員さんやパートさんが20人以上集まって宴会をしていました。

私が昔働いていた居酒屋での宴会も行いました。

昔のよしみでほぼ貸し切りにしてくれまして・・・

当時の居酒屋の店長には本当に感謝ですね。

その後も交流はさらに深まり、プライベートでも良く出かける仲にもなりました。

あの時の連帯感と結束力は本当に強かったです。

 

一番の思い出は当時仲良くしていたヤツが同じアルバイトの女の子と結婚したことです。

盛大な結婚式は出来ないので、店長の計らいでメンテナンス日に店で披露宴を盛大に行いました。

スーパー銭湯での結婚披露宴です。

社員さん、パートさん総勢50名が出席して大盛り上がりでした。

その後、彼には3人の子供が出来ました。家族で仲良く暮らしています。

実はその彼とは今ではビジネスパートナーでして・・・

いい取引をさせていただいているから不思議ですね?

 

シフトの時間帯は違ったのですが、仲良くなった10歳年の離れた後輩がいます。

同じベイスターズ好きという事ですっかり仲良くなりました。

その後輩とは今草野球を一緒に楽しんでいます。

 

残念ながら私の勤めたスーパー銭湯は10年前に潰れました。

しかし、その時仲良くなった仲間は現在私のお店のお客さんとして来てくれています。

あの時の仲間同士で集まることもなくなりましたが、私のお店には皆来てくれるので、私を中心に各自の近況報告がなされているという面白い現象が起きています。

皆今でも元気でそれぞれのフィールドで活躍しているのがまた嬉しいですね?

 

スーパー銭湯でのアルバイトは今思い出しても本当に楽しかったです。

多くの友人もできましたし、かけがえのない時間を過ごせたんだと思います。

一生分の男性の裸も見たと思います。

それも他ではできなかったいい経験なんでしょうね?