昨年あたりから私の周りはベビーラッシュです。
従業員、取引先、後輩、ご近所などなど・・・
コロナ禍でありながらおめでたいニュースがたくさん飛び込んできて幸せそのものです。
そんな方々から早くもこんな質問を良くされます。
「子供の習い事は何がいいですか?」
私は人様にアドバイスできるような立派な人間ではありません。
おかげさまで子供は3人ともすくすくと育ち、各自のフィールドで思い思いの活動をしていますが、子育てはほぼカミさん任せです。
そんな私が子育てについて偉そうに物申すなんておこがましいかぎりです。
しかし、これだけは習わせたらいいのでは?と思う習い事が一つだけあります。
「ピアノ」です。
私自身4歳から20歳までピアノを習っていました。
近所に住む先生の自宅でやっていたピアノ教室にずいぶん長いこと通っていました。
田舎出身の両親は全くピアノなんて弾けません。
母は貧しい家庭に育った影響でピアノのある家に憧れもあったようです。
ある日突然、私の意志とは全く関係なくピアノ教室通いが始まりました。
自宅にもアップライトですがピアノがド~ンと備え付けられました。
初めて教室に連れていかれた日のことはよく覚えています。
当時音大生だった先生がアルバイトで始めた自宅のピアノ教室へ向かいました。
家から徒歩で2~3分の場所です。
初めて見た恩師の印象は保育園の先生のようでしたね。
素敵な洋服を着ていて赤いスカートを履いていたのを鮮明に覚えています。
若くて綺麗な人だな~と子供心に感じたものです。
当時先生が使っていた高級グランドピアノをこの時初めて触りました。
なんだかすごいものに触れている!という感覚がありましたかね?
先生はニコニコしながら4歳の私を温かく迎えてくれました。
レッスンは週に1回で30分。
毎週宿題が出され、自宅で練習して教室に通うというごくごく一般的なお教室です。
習い始めて半年くらいで両手で楽譜を読みながら弾けるようにもなりました。
しかし、所詮は強制された習い事です。
いい加減な自分はほとんど練習もせずにレッスンにだけ通うような生徒でした。
先生もヤンチャな男の子にピアノを教えるのはさぞかし大変だったことでしょう。
小学3年生から中学2年生くらいまではレッスンに行くたびに先生に怒られていた記憶しかありませんね。
それでも先生の教室の居心地が良かったことと、時々私の前で披露してくれる本格的な演奏を聞くたびに心が癒されていたのかもしれません。
中学2年生くらいの時でしょうか?
先生は急に私を教室に呼びつけ、ある作業を手伝わせました。
「リトミック」という指導法を教室で始めるためです。
「リトミック」はスイスの音楽家エミール・ジャック=ダルクローズが考案した音楽学習方法です。
ただやみくもに楽器を演奏させるのではなく、発達段階の幼少期に音に合わせて体を動かしたり、声を出したり、耳をすませたり、それをゲームにしたりと、音楽に対する感覚を体感的に身につける指導法です。
当時まだ具体的にこの方法を取り入れている教室は少なかったと思います。
勉強熱心な先生は私を実験台に使いながら自らその指導法を学び始めました。
反抗期真っ最中の私に、幼稚園児がやるような簡単なリズムゲームをやらせたり、ゲームで使うカードを作らされたり、一緒に歌を歌わされたり・・・
今思えば自分でもよく付き合ったな~と思います。
その後先生はリトミックの資格を取得し多くの子供たちに指導していました。
私が幼いころにやってくれていたら、私ももっとまともな大人になっていたのかもしれません。
結局20歳までピアノを習い続けました。
決して上達はしませんでしたが、多くの音楽に触れ心も体も成長していったというわけです。
ピアノを習って一番良かったと思うことは、とにかく耳が良くなる!という事です。
世の中にはありとあらゆる音が溢れています。
人の話す声ももちろん音です。
ピアノを習っているとその音に間違いなく敏感になります。
しかもピアノ演奏には強弱やテンポが重要です。
大きな音も小さな音も聞き分けられる聴力が間違いなく身に付くでしょう。
私は現在、仕事でその聴力をいかんなく発揮しています。
誰かと話していても隣で別のスタッフが話しているお客さんの声や内容は同時に耳に入ってきます。
同じ職場で働いているスタッフの何気ない会話も離れたところでも聞き取れます。
電話での会話も電話越しの人が今どのような場所にいてどのような状況で話しているのか?も容易に把握できます。
耳がいいのでいつもと違う音にも敏感です。
お客さんや従業員の話す声のトーンがいつもと違うとすぐにわかります。
機嫌がいいのか?悪いのか?何か不満があるのか?満足しているのか?
顔を見なくても声である程度推測が出来るんです。
さらに、車関係の仕事の為、車から発生する異音にもすぐに反応できます。
この車どこかおかしいかも?こんな音普段はしないな~?なんて異変をキャッチできるんです。
間違いなくピアノを習っていた効果でしょう。
さらにピアノを習うことで確実に頭が良くなります。
ピアノを弾くためには楽譜を読む必要があります。
楽譜は非常に複雑です。
その楽譜を目で読み取りながら鍵盤を叩く作業は、風景模写をする作業によく似ています。
目で見たものを脳の中で変換し今度は指でそれを表現する。
当たり前の作業ですが、実に難しい作業でもあります。
また、ピアノ演奏は基本的に暗記するものです。
短い曲も長い曲も、演奏する際はその全てを暗記するのが当たり前です。
これを暗譜と言いますが、楽譜を全て頭の中に暗記して今度は音を全て記憶します。
次に指と体で何度も練習をし全身でその曲を覚える必要があるんです。
楽器を演奏する人なら当たり前のことですが、よほどの才能でもない限り日々の訓練で、かつ長い期間を経て身につけることができる作業でもあります。
感覚的に行ってはいますが、間違いなく脳がフル回転して活性化されるはずです。
結果頭が良くなると信じています。
もちろん他の習い事でも多くのことを身につけられるでしょう。
しかし、一般的にどこでも誰でも容易に始められる習い事の中で最も効果的なのはやはりピアノと言えます。
このピアノを習えたことは私にとって本当に大きなことだったと思いますし、習っていなかったら今の人生はなかったと断言できますね。
異論、反論はあると思いますが、ぜひ参考にしてほしいと思います。
さて、私の恩師ですが現在凄いことになっています。
自宅でのピアノ教室から拠点を都内に移し、今では数百人という生徒さんを抱える大きなスクールの代表になりました。
10名以上の指導員がいて、3か所の教室で日々ピアノの指導を行っています。
コンクールでも多数の入賞者を出していて指導者兼経営者として成功を収めています。
本当に尊敬すると同時に、いい先生に指導してもらっていたんだな~と思うばかりです。
最後に恩師にあったのは10年以上前です。
今度久しぶりに会いに行こうかな?と書きながら思ってしまいました。