お盆ですね。
今から30年以上前、祖父母がまだ元気だったころは、毎年お盆には両親の実家へ帰省し儀式をきちんと行っていたもんです。
母の実家は青森県は下北半島のド田舎でして、村には信号機が1つしかありませんでした。
しかも、野生のニホンザルがうじゃうじゃ生息していまして、人間よりもサルのほうが多い村でした。
祖父母の実家のすぐ目の前は海でして、毎日にように海水浴や釣りをして過ごした楽しい思い出があります。
映画館もゲームセンターもショッピングモールもない村でしたが、小学生の自分には最高の遊び場でした。
また、お盆になると親戚が一堂に集結していましたので、叔父や叔母はもちろん、従妹とも楽しく過ごせました。
そんな母の実家で迎えるお盆はかなり伝統的なものでして・・・
仏壇には盆提灯やたくさんのお供え物を置き、飾り付けもとても豪華でした。
そして親戚一同がお寺に行く際も、たくさんの荷物を持たされました。
特に津軽の下北半島では昔から「法界折」という精進料理を詰めたお弁当をお供えする習慣がありまして、その法界折をお墓でみんなで食べるのが習わしです。
そのお弁当がとにかく子供の口には合わなくて・・・
毎年苦痛に感じていたのも鮮明に覚えています。
また、祖父が毎年墓の蓋を開けて、ご先祖さんたちの骨を平気で私の目の前に差し出したりするものだから、あまりいい思い出はありません。
今でも強烈に覚えているのは、この村ではお盆になると怪奇現象がよく起きていたことです。
夜になるとどこからともなく不気味な声がしたり、薄暗い夕方に興味本位でお墓の近くに行った時は本物の幽霊を見てしまいました。
さらに驚くのが、親せきがお寺に忘れ物を取りに行ったら、不気味な光がすごいスピードでお墓に出たり入ったりしていたそうです。
母に聞いたら「昔からだよ!」なんて真顔で言われるもんですから不気味で仕方がありませんでした。
観光という名目で有名な「恐山」に何度か行ったことがありますが、ここでも不気味な体験をしました。
恐山には温泉があり、せっかくなので家族で入ることにしました。
男湯と女湯は壁一枚で分かれていたのでお風呂に入りながら壁越しに会話を楽しんでいました。
しばらくすると母が誰かと話していたので、別のお客さんがいるのだと思い会話をやめ風呂から上がりました。
しばらくすると母が出てきました。
他のお客さんいたんだね?と聞くと母がなんとなくバツの悪い顔をしています。
あとから聞いた話ですが、脱衣所には母の衣服以外なかったそうです。
また、脱衣所から風呂場を振り返ると先程までいたはずの女性の姿はなかったんだとか・・・
とにかくお盆の思い出はそんな不可思議な事ばかりです。
一方父親の実家は長野県でした。
こちらはお盆に賑やかにする風習がなくて、静かなものでした。
また比較的都会だったため、お盆に帰省すると祖父母にたくさんのおもちゃやお菓子、運動靴なんかを買ってもらえました。
ここでは素敵な思い出ばかりです。
余談ですが、一度祖父に自転車を買ってもらおうと考え、近くの自転車屋さんに一緒に行きました。
田舎だったため欲しい自転車がなく、また持って帰るのも大変なので残念ながら断念することに・・・
すごく親切にしてもらったので、その自転車屋さんのことはよく覚えていました。
10年以上前にある女性と親しくなりました。(けっしてやましい関係ではありません)
お互いベイスターズが好きということですっかり意気投合し今ではよく一緒に観戦に行く仲です。
時間が合えば食事も一緒にしたりします。
そんな彼女に長野でのエピソードを話したら驚いていました。
なんと彼女はあの自転車屋さんの孫だったんです。
彼女も夏休みには帰省していたみたいなので、ひょっとしたら偶然会っていたのかも?
世の中本当に狭いな~と感じた瞬間でした。
そんなお盆の習慣もいつの間にかなくなりました。
青森の祖父母は体を悪くして結局私の実家で面倒を見ることになり、祖父は数年前に他界、祖母はまだ健在ですが特別養護老人ホームで余生を過ごしています。
長野の祖父母も10年以上前に体を悪くして他界しました。
父も母も叔父も叔母もお盆の法事や風習を自分たちの代でやめました。
お墓参りくらいは行きますが、そろそろ墓じまいの話も出ているほどです。
昔は7月の中旬くらいからスーパーでもお盆用品が売っていたのを覚えています。
中の電球がクルクル回る盆提灯や立派な盆飾りが並べられていたものです。
今では仏具屋さんにでも行かないかぎり、目にすることもなくなりましたかね?
地方ではまだまだしっかりとしたお盆の風習が残っていると思いますが、首都圏では毎年なくなりつつあるのでしょうか。
もちろん私の3人の子供たちはお盆の風習など知る由もありません。
仏壇も神棚も我が家にはありませんし、お墓も離れた場所にあります。
葬式や法事には何度か参加させていますが、お盆の思い出なんてものは子供たちには無いでしょう。
先祖代々、何十年、下手をすれば何百年と続いてきた風習がたった30年ほどで消滅する寂しさ・・・
それだけあらゆる状況が目まぐるしく変化する時代になったということかもしれませんね?
お盆の思い出でした。