新型コロナウィルスの感染拡大により多くの飲食店が営業を制限されています。
毎日多忙で、休みがほとんどない私にとって、仕事終わりに行く居酒屋やスナックは最高の癒しの場でしたが、今年に入りほとんど行けなくなりました。
今は家でチビチビ呑むばかりです。
5年前、私のお店の近くに小さなスナックがオープンしました。
70過ぎのママと80近いマスターが二人で切り盛りする本当に小さなスナックです。
オープンしてすぐにママがあいさつに来てくれました。
話を聞くと水商売歴45年のベテランだそうで、以前営業していたお店が立ち退きを迫られこっちに移転してきたんだとか・・・
あいさつ代わりに車の整備のご依頼をいただいたので、お礼にと次の日に立ち寄ったのが私のスナック通いの始まりです。
その日は仕事が忙しくてひどく疲れていたのを今でも覚えています。
そんな私にマスターはおいしいお刺身を出してくれました。
マスターは昔魚河岸で働いていたこともある立派な職人です。
私もその昔板前をしていたことを話すとすごく喜んでくれました。
自分が今の仕事に就くようになったきっかけや家族のこと、日々の悩みなどを嫌な顔せずに聞いてくれるのでついついお酒も進んでしまいましたね。
それからというもの、週に1~2回は通うようになりました。
ある日ひどく疲れている私を見てママがこんなことを言ってくれました。
「あんたさ~そんなにキレイな顔しているのにいつも不機嫌そうにしてるよね?疲れているのか悩んでいるのか知らんけど、親からもらったキレイな顔が台無しだよ!あんたも商売しているならいつもニコニコしてな!商売人ってそういうもんだよ!」と・・・
地元で45年以上商売をする大ベテランから言われた一言に私は頭を殴られたような感覚になったのを覚えています。
その一言は本当に大きかったです。
それからというもの、なるべく笑顔で仕事に取り組むように心がけています。
そのスナックも2年ほど前に移転してしまいました。
たまたま駅の近くにいい物件が空いたという理由です。
もちろんお店からは離れた場所になりましたが、週に1度は通い続けていました。
そのお店ではいろいろなお客さんとの出会いも多くありました。
みな様々な事情を抱えているにもかかわらず、本当に気さくに接してくれるので今ではすっかり仲の良い呑み仲間です。
最近は別のお店にも通うようになりました。
知り合いに紹介されたオシャレな飲み屋さんです。
比較的自分と年齢が近い方々が多く通うお店ですので、そこでも色々な人と仲良くなりました。
そして面白い出会いがあったんです。
今年の1月のことです。
お正月が終わりそのお店が新年の営業を始めるということで顔を出しました。
新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、お客さんの数を制限して営業してくれるとのことでしたので安心していくことができました。
いつものにぎやかなお店なんですが、その日はいつもの雰囲気ではなく静かに一人で飲んでいました。
ふと隣の席に目をやるとCDとDVDが置いてあります。
ママに「これ何?」と聞くと「今から一人来るからとなりいいよね?」と言われました。
CDとDVDはなぜか全てX-JAPANのものでした。
10分くらいすると一人の中年男性がやってきました。
眼鏡をかけた非常に真面目そうな方です。
私の隣に座ると軽く会釈をしてママと話し始めました。
「これ借りていたCDとDVDありがとね!」とママがその方に返却をしています。
その方がそのCDとDVDをしまおうとした時、思わず声が出てしまいました。
「X-JAPANお好きなんですか」
私はX-JAPANが大好きです。
小学生の時、初めて聴いたあの強烈なサウンドは今でも忘れられません。
ピアノを習っていたこともあり、すっかりYOSHIKIのファンになってしまいました。
今思えば男の子がピアノを習っているだけでバカにされる時代でした。
しかし、YOSHIKIの登場でピアノを弾けることが逆に格好いいと評価されるように!
YOSHIKIの存在がなかったらピアノを長く続けることもなかったかもしれません。
もちろんCDやDVDは全て持っています。
コピーするためにバンドスコアも買い漁りました。
チケット争奪戦に毎回挑み、ライブにも7~8回行きました。
今でも時々懐かしむように聴いています。
そんな自分が思わず声をかけてしまったのは必然でしょう。
声をかけるとその方はすごく警戒した様子で一言「どうも!」
声をかけた以上話を盛り上げなくちゃと思ったのですが、なかなか会話が弾みません。
するとママがカウンター越しに「この人いつも一人で飲んでるから、あまり人と話さないのよ!気にしないで!」と言ってくれました。
あ~声をかけてしまって逆に申し訳ないな~とさえ思いました。
しかし、しばらくするとその方のほうから声をかけてくれました。
「X-JAPANのどの曲が好きですか?」
その会話がきっかけで気が付けば2時間以上盛り上がりました。
好きな曲はもちろん、コアなファンしか知らないようなマニアックな話、過去のライブでのアクシデントや演奏技術のことなどなど・・・
その方もギターを練習しコピーバンドをやっていたそうなのでお互いに話は尽きることはありませんでした。
そんな盛り上がる二人の姿を見てママが「この人がほかのお客さんとこんなに楽しそうに話すの初めて見たよ!あんた達連絡先交換しな~」と言ってくれました。
結局最後まで盛り上がり連絡先を交換して「また一緒に飲みましょう~」と約束して解散しました。
次の日、新型コロナウィルスの感染拡大を受けてお店が無期限のお休みに入るとの連絡がありました。
仕方がないことではありますが、せっかく素敵な方と出会えたのにこんな形で会えなくなるなんて、残念でなりません。
結局お店は今でも閉まったままです。
仕方がないことだ!と全てを受け入れるしかありませんね。
そんな時思いもよらないメッセージが届きます。
先月のことです。
お風呂から上がってふと携帯を見てみると一件のメッセージが届いていました。
あの時ご一緒させていただいた方からでした。
連絡先は交換したものの、直接やり取りをするのは半年ぶりです。
「お元気ですか~」というシンプルなメッセージでしたがすぐに返信をしました。
30分ほどお互いの近況報告や最近聞いている音楽の話題でメッセージのやり取りをしていましたが、突然その方が「よかったら家で飲みませんか?」と言ってくれました。
その方は一人暮らしで私の家のすぐ近くに住んでいることがわかりました。
お互い次の日がお休みだったこともあり翌日お邪魔することにしました。
たった一度だけ、2時間程度ご一緒しただけなのに、ご自宅にお邪魔することにさすがの私もドキドキです。
ご自宅に行くと笑顔で出迎えてくれました。
私の為にスーパーでおつまみになりそうなお惣菜をたくさん買ってくれていたみたいで恐縮してしまいました。
お酒も出していただき楽しいオッサン二人の家呑みがスタートです。
X-JAPANのDVDを見ながら二人でワイワイ飲むお酒は格別でしたね!
結局気がついたら4時間くらいお邪魔してしまいました。
コロナ禍で人とのお付き合いが制限されるなか、久しぶりに充実した楽しい時間でした。
家に帰ると女房から「一体どこの誰と飲んでたの?まさか女?」なんて疑われましたが、オッサン二人のツーショット写真を見せたら呆れた顔で笑っていました。
偶然とはいえ素敵な出会いをここでもいただけたことに感謝しかありません。
昨日もその方から「今月もどうでしょうか?」とお誘いのメッセージをいただきました。
本当にありがたいことです。
オッサン二人は今月も楽しみます。